症例担当 渡辺実千雄医師(第4期尚志塾士)
1. 症例 84歳 女性
主訴 ① 腰痛(腰椎部)
【経年齢的病歴】
14歳 右中耳炎(川に飛び込み罹病)その後より難聴
45歳 子宮筋腫手術
50歳 右滲出性中耳炎手術
74歳 右乳癌手術
80代 不眠症(睡眠導入剤内服中)
81歳 圧迫骨折2回
(局所に注射2回→無効、鎮痛剤・骨粗鬆症用剤内服中)
現在
1) 腰痛(腰椎部)
:安静時痛、長く歩けない、就寝中の圧痛、入浴で軽減
2) 右側の頚肩・上肢・全手指が重い、入浴で軽減
3) 冷え性
4) 口内炎が出来やすい
5) 口内が辛味・塩味でピリピリと痛む(茶など飲むと消失)
6) 膝痛?(問診時に訴えはなく、途中で訴え始めた。しかし、治療終了時には始めから膝痛などなかったとおっしゃる。認知症か? )
【診察・背診】
・胸のbc部の右側凸のカーブ、
・c+a部はそれほど曲がっていない、
・腰のbc部のつっぱり(リンパ性)は強くない
・グーパー10回・右側が遅延(外向きになる)
→左側脳出血の可能性
・痛覚検査
手 a+1あたりの背側の痛覚は右側が鈍麻
→左側脳出血の可能性
足 大腿内側部の痛覚には左右差なし
2. 病態分析
・右耳難聴→聴神経圧迫(橋の炎症)
・子宮筋腫
→迷走神経圧迫(延髄の炎症)からS2,3レベル障害
・右乳癌
→迷走神経圧迫(延髄の炎症)からT2~6レベル障害
・不眠症
→視床の細胞の(血液の)蓄積
・骨粗鬆症・圧迫骨折
→X迷走神経圧迫(延髄の炎症)からT12〜S3レベル障害
・右側の頚肩部が重い
→頚肩を含み末梢へ出現するラインの症状
・・・区域的中枢
・右上肢・全手指が重い
→手三陽の症状・・・上位脳の線維の不完全圧迫
・冷え症
→視床下部前側の細胞の蓄積
・口内炎
→孤束核の障害からの粘膜異常
・辛味の摂取でピリピリする
→舌咽神経圧迫(延髄の炎症)
・認知症 →大脳萎縮
【責任中枢】
上位中枢
上位脳 ・左側大脳の細胞の破壊と圧迫
下位脳 ・間脳(視床・視床下部・下垂体)の細胞の蓄積
・脳幹(延髄・橋)の線維の圧迫
下位中枢
SC/SN ・T2~T4、T12~S3 の線維の圧迫
(SCは視床下部の障害から、SNは迷走神経の障害から)
区域中枢
rt AyII/c+a
【治療】
1)区域中枢の治療
rt AyII/c+a の連接
・・・ラインの根元に対するF-point c+a の連接
初診時の処置
rt TxIIIの1、c、aにイオンパッチ貼付
(臓腑通治 rTxIII/1:c+a)
[治療結果] 右頚肩部の重みが消失
2)上位脳の治療(大脳の細胞の圧迫:右上肢の重み)
rAyIII/bc+c+a /bc+c+a
rAyII/c+a /c+a
rTyII/c+a+d /c+a+d
rTyIII/c+a+d /c+a+d
rTyI/c+a+d /c+a+d
初診時の処置
rTyIIの牽引瀉法
rTyIIの2、cにイオンパッチ貼付(rTyII/2:c)
[治療結果] 右上肢の重みが軽減
3)下位脳とSCの治療
To/2d+c+a+T2~4+T12~S3
lAxIII/bc+c+a/bc+c+a
rAyIII/bc+c+a/bc+c+a
rAxIII/bc+c+a/bc+c+a
初診時の処置
To/2d+c+a+T2~4+T12~S3
[治療結果] 不明
3. 考察
1) 右側の頚肩・上肢・全手指が重い症状は、連続した症状の様に見えても
・軀幹部(”幹”の部分)の重み
・肩関節を含む上肢(”枝”の部分)の重み
とに分ける;
・軀幹部の症状は
1 局所性の所見がない
2 順方向の症状がない
3 ラインの症状である
4 よって区域性中枢の症状である
5 治療はラインの根元に対してFポイント:a(+c)の連接を行う
・肩関節を含む上肢の症状は
1 全五指を含む症状である
2 面の症状である
3 片側の手三陽経の面の症状である
4 グーパーテスト陽性、かつ手背の感覚鈍麻がある
5 よって大脳の細胞の破壊と圧迫の症状である
6 治療は3ヶ月以上経て既に症状の進行がない場合の処置を行う
2) 手関節背側の痛覚に左右差があり大腿内側の痛覚には左右差がないことから
a 上位脳の左側の細胞の破壊/圧迫
・・・右手三陽(+右足三陰)
b 上位脳の左側の線維の不完全圧迫
・・・ 右手三陽(+右足三陽)
の二つの場合が考えられる。
aは、グーパーテスト陽性や手背の感覚鈍麻の存在から推定されるが、bは、拘縮や可動域の低下を認めないため可能性は少ないと考えられる。
3) 上記2)より上位脳の細胞の破壊や圧迫が推定される。ここで、一般に上位脳の細胞の破壊や圧迫に対する治療の時期は;
・細胞の破壊の治療
・・・発症後3ヶ月以内または発症後3ヶ月以上 であっても症状が進行している場合
・細胞の圧迫の治療
・・・発症後3ヶ月以上の場合
である。
したがって、本例の初診時に rTyIIの牽引瀉法が行われたのは、上位脳の細胞の障害を認めかつ発症後3ヶ月以上で症状が固定されている場合、と見なされたからと考えられる。
最後の二行は、柯先生がペレス銀座クリニックで治療をされた内容に対する考察です。渡辺