報告者 寺木啓祐治療師
脊索腫は、胎生期における脊索の遺残組織に由来する腫瘍で、頭蓋・脊椎に沿って、あらゆる部位に発生するが、頭蓋底(斜台)と仙骨部に好発する。具体的には、脊索腫の約50%が仙骨部に発生し、頭蓋底は35%、その他脊椎が15%と報告されている。
【症例1】 75歳男性
主訴
1)仙骨部痛(rt>lt)2)右下肢(AyIII,AxIII)の触れない痛みと痺れ
3)膀胱直腸障害
病歴
60歳 両臀部痛、便失禁
61歳 脊索腫Dx、塞栓術
62歳 腫瘍切除術、その後再発で6回のope
66歳 腫瘍14㎝径まで拡大、放射線治療40回で腫瘍縮小、
その後緩和ケアを継続するが主訴は残存
処方 To/2d+c+a+L1~S5 AxIII//6/3!
経過 初回は少し改善した感覚はあったがすぐに戻り、その後11回治療を行ったが症状が強く、本人が継続通院を断念
【症例2】 45歳男性
主訴 1)仙骨部痛 2)膀胱直腸障害 3)頸部、背部、腰部の痛み 4)両足の冷感
病歴
38歳 仙骨部の痛み、違和感発症、脊索腫Dx
39歳 放射線治療開始、腫瘍縮小するが症状は残存
処方
To/2d+c+a
lAxIII/bc+c+a/bc+c+a
rAyIII/bc+c+a/bc+c+a
rAxIII/bc+c+a/bc+c+a
経過 初回から全く反応なく、その後4回治療を行ったが本人が継続断念
感想
銀座での仙骨脊索腫の症例は2例のみだったが、他の症例に対する遠絡療法の反応と異なり、まったく歯が立たないような印象だった。2例とも仙骨や神経に浸潤する腫瘍の完全摘出が困難であるため、頻回の放射線治療を受けて腫瘍自体は縮小したものの、重度の仙骨部の痛みと膀胱直腸障害のため、治療を継続する本人の体力と意志の維持が困難だった。症例1の治療直後の反応からは、もし多頻度・長期間の遠絡療法を継続できれば、治療に反応してくる可能性はあると考えられるが、銀座における2症例からは遠絡療法の積極的適応とするのは難しいと考えられた。
また2例のみの経験ではあるが、症例1と2の処方と反応の違いから、仙骨脊索腫については仙骨部に発生している腫瘍に対して、下位脳治療(万能式)だけでなく To/S領域の治療を行う必要があると考えられる。
脊索腫は胎生期の遺残組織由来の腫瘍であり、その好発部位は仙骨と頭蓋底(斜台)とされる。このことは遠絡医学におけるbc領域の関連性(アトラスの上部と仙骨レベル・・・治療例では前立腺や陰部の治療をTo/dやアトラスより少し上方を狙うことで行うこと)を考える上での一つの参考になると思われる。
当日のディスカッションの内容です。
(レコーダーから書き起こしました。
もし誤りがあればコメントで訂正頂けますようお願いいたします。寺木啓祐)
■寺木Mr.
ペレス・銀座クリニック/銀座遠絡教学医院の症例を報告いたします。銀座では尚志塾の先生が問診をしっかりとり、診断と分析をとても詳細に行っていました。しかしながら、その後の症例の経過について報告する機会がなかったので今回は試みの報告です。
脊索腫はかなり稀な疾患ですが、仙骨に発生したものは痛みと膀胱直腸障害が極めて難治性となることから、今後遠絡を頼って来られる患者さんがいるかもしれません。銀座でも12年間で2例のみ、治療もうまくいかなかった症例でしたが、参考のためにシェアさせていただきます。
■渡辺Dr.
西洋医学的に悪性腫瘍の脊索腫ということを考えずに症状のみを分析すれば、触れない痛みと痺れのラインが下肢のAxIII、AyIIIなので、原因はAtlasの直上部のCRPSと考えられます。仙骨部痛や膀胱直腸障害のOne pointはAtlasの直上部、もし病名がわからずに遠絡だけで治療するとしたら下位脳の炎症を時間をかけてとっていくことになります。処方はSCに下位脳の治療を加えるとよいと思います。
■山本Dr.
Atlasの直上の炎症をとるのはレーザーで行えばよいのでしょうか?
■渡辺Dr.
Atlasの炎症から始まり、延髄に波及します。そのAtlas直上の症状が下のほうにあらわれているということなので、To/2d+c+aもAxIII、AyIII/bc+c+aも必要です。
そして恐らくこの場合のbc点(Atlasの直上の対応)の取り方は、「c」点に近いところに取るのが良いと思います。
炎症が延髄レベルならまだよいが、橋までいくと相当深く進行していることになるので、その炎症を取るのにはとても時間がかかり、9~12ヵ月といわれています。Atlasの直上くらいならToとbc(c点近く)で取れる可能性はあると思います。血液の蓄積は1~3ヵ月、他の症例の報告でもまず改善するのは血液蓄積症状で、残るのは多くの場合、脳幹の炎症症状です。
■申Dr.
下位脳の治療をすると、まず言われるのが目の前が明るくなってスッキリする、ということですね。